心理的瑕疵物件(事故物件)について
はじめに
転職や転勤、新学期や結婚等で新たな地で新しい生活を始めるため、賃貸住宅を契約し入居したのに、その物件において恐ろしい事件や事故があったとか教えてもらえないとわからないですよね。意外と多いのですが、契約時にその物件又はあなたが住んでいた部屋で過去何があったかを近隣住民から聞くなんてこともあります。そのような過去に事件・事故のあった物件を心理的瑕疵物件といいます。今日はそんな心理的瑕疵物件について説明していきます。
そもそも心的瑕疵物件(事故物件)ってなに?
不動産売買・賃貸借契約の対象となる土地・建物でその物件の専有部又は共用部において何らかの原因で前契約者(居住者)が死亡した経緯のあるものをいいます。
ただし、死亡の原因によっては事故物件と呼ばないものもあり、その判断基準には明確な定めはありません。
一般的な事故物件といわれるもの
・事件死(殺人・傷害致死・火災等)
・事故死・自殺・災害・孤独死
・広義において、近隣に反社会勢力が居住
事故物件といわれない場合が多いもの
・孤独死でも発見が早く腐敗等が進んでいない場合
・共用部(廊下・ベランダ屋上)からの飛び降り、転落死
書いていても怖くなります。。。
自分も実際に事故物件に遭遇したこともありますが、この仕事をしていてもあまり担当したくない事案ですね。
宅建業者の心理的瑕疵物件の説明義務
賃借人に心理的瑕疵物件を紹介する場合、宅建業者はその旨を必ず説明しなければなりません。
ここまではいいのですが、前の契約者(居住者)についてはそうなのですが、一度心理的瑕疵物件に誰かが入居し、その後あなたが契約した場合はどうでしょう?説明義務があると思いますか?
実はこの辺りはっきりと説明しなければならないいう明確な根拠はありません。なので、酷い宅建業者や家主の中には、管理している物件又は自分の持っている賃貸物件に心理的瑕疵が発生した場合、一時的に知人や知り合いの名義を借りて入居したことにし、1年ぐらい経過したら説明をしないで新しい入居者の募集を始めるところもあります。(現在では絶対的に少ないと思います。)
また、実際に担当していた家主さんで、心理的瑕疵が発生した時に次回の募集について賃料をかなり下げ、尚且つ契約にあたっては心理的瑕疵の説明をしなければならないことを伝えると、「全責任は自分が負うので、内緒で募集して欲しい。」って言われたこともあります。(もちろんその部屋だけ募集はしませんでした。)
このようなことは、何度か経験したことなので、全体的にみると水面下ではこういった話はよくあることかもしれません。
実務的には2回目以降の心理的瑕疵の説明については、決まりがないため、判例や過去の事例に基づいて対応している業者さんも多いです。
一般的には。。。
前契約者(居住者)の事件・事故については説明をする。2回目以降については事件死など報道等で周知されている場合は説明を行う。孤独死等においては死後発見が早く腐敗等が著しくない場合は、2回目以降の説明は状況に応じて判断する。腐敗等がひどい状態で発見された場合は、説明しない場合もある。
屋上からの飛び降りなどは、契約する部屋とは基本的に関係ないため、報道等されていない場合は、あまり説明しません。
細かい内容まで記載できないですが、基本的にはケースバイケースでその時によって対応のバラバラなのが実情です。(明確な定めがないため)
では、契約者はこのような場合どうしたらいいのでしょうか。。。
心理的瑕疵物件であることを説明されずに契約した場合
本来説明をしなければならない、前契約者(居住者)の心理的瑕疵を説明せず
後になってそのことが判明した場合は、契約の解除をすることができると思います。
しかし、先ほども記載したとおり、2回目の心理的瑕疵や契約号室以外の同じ建物の他の部屋での殺人事件など説明義務が曖昧な場合は、泣き寝入りしなければならいかというと、そんなこともありません。
この場合は消費者契約法第4条によって取り消すことができます。
消費者契約法第4条1項及び2項
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
めちゃくちゃ難しく書いてますね。。。
要は、その内容を事前に説明を受けていたら、契約しなかったなど、消費者の契約に重大な事実を告げなかった場合は、契約を取り消すことができます。
ただ、これも使い方によります。ご自身が契約した部屋であれば十分可能と思いますが、例えば屋上から飛び降りた場合や、もう10年も経過した事件死などについては使えないこともありますので、万一、不動産業者とこのようなことで争いになりそうな場合は、専門家等に事前に相談した上で対応しましょう。
今日はここまで、本日も読んでいただき、ありがとうございました。